2026 TN夏合宿/後輩達の夏物語

合宿が明けてひと月が経ちますが、道場に来る生徒達はまだ合宿ネタで盛り上がり、掴んだ自信を活かしています。
合宿の総括ラストは、先輩達に追いつき追い越せ、後輩達の夏物語です。

先ず最初に、先輩達の素晴らしい活躍の裏には後輩達の存在が欠かせません。
彼等は、存在自体がすでに大活躍なのです。
今の先輩達が、成し遂げて来た成長を実感出来るのも、合宿に挑んだ後輩達あってのことです。
リーダー達にも当然のように後輩の時期がありました。
先輩達の姿を見て、意識し目標にして挑戦を続け、経験を積み上げて今の地位を築き上げてきました。
そんな、苦労の果てに掴んだ自信を雑にするはずがありません。
リーダー達が謙虚で後輩達に優しいのはそのためです。
さて、そんな後輩達の中で、とても印象深く活躍した生徒を挙げておきます。
先ずは、3級の5年生。

TN夏合宿は、小学3年生から参加出来ますが、彼は2024年の合宿から3回連続での挑戦となります。
3年生の頃は6級で、まだ普段の稽古でも消極的な態度が目立っていました。
組手が苦手で、稽古に来ることの葛藤も多い時期もありました。
あれから3年の月日が経ちますが、大きく変化が見えてきたのは昨年の春です。
彼は4級、上級者となりました。
発言や態度、稽古への姿勢も吹っ切れたように、積極性が目立つようになりました。
小学4年生くらいで大きな成長を遂げる子は多いですが、彼はその筆頭です。
合宿に参加出来なかった先輩のモノマネ。憧れの先輩への敬意の舞も積極性の現れでしょう!

初回よりも2回目、それよりも今回と皆が認める着実な成長の裏には、経験を積み重ねる事が出来る真面目さと忍耐力があります。
彼の丁寧且つ積極的なパフォーマンスは、ご両親への感謝で溢れている気がします。
今回の合宿では、3日間通して稽古も宿でも、周囲に気を配り立場を意識して言動を挑んでいるように感じました。
ハイライトは、最終稽古での型を披露した時です。
彼は、目に涙をためて感情を爆発させていました。
私は、空手を始めて30年程になりますが、涙を流しながら型をやる生徒は見たことがありません。
それだけ本気で挑んでくれている生徒の存在に私も心を打たれました。
余談ですが、涙と言えばこんな黒帯の先輩がいます。

2024年、彼が高校3年生で参加した合宿でのこと。
彼は、部屋の班長とキッズ全体のリーダーを担っていたのです。
バーベキューの最中でした、彼はそっと私の横に座ると「師範、リーダーキツいです」「上手く出来ません」と涙ながらに訴えてきたのです。
これも、あるいみ後輩達のお陰で得られた経験ですよね。
今回の、小学生が流した涙とはまた違う涙の種類となりますが、2人共に本気で挑んでいる証拠です。
それならば、答えなんてつまらぬものを探す必要はありません。
普段の稽古では、そこまで感情を入れる事もぶつける事もなかなか出来るものではないでしょう。
合宿という環境がそうさせているのです。
ですが、それを最大限に活用出来るかどうかは生徒の意識次第。
挑戦を続けて、経験を積み上げ、成長を実感し、自信を掴み自分を大事にすることです。
彼等のように!

さて、もう1人は小学4年生、6級です。

合宿は、2年連続2度目の参加となります。
彼の特徴を聞くと、誰もが「消極的」と答えるほどの超慎重派、超真面目ともいえます。
人の良し悪しは表裏一体です。
少しでも不安になると動揺して動けなくなる側面がありました。
型も組手でもやれば出来るのに、頭が働き過ぎるから行動が出来なくなってしまう。
変化が見られたのは、丁度一年前で彼が初めて合宿に参加した以降のことです。
その時、彼はまだ6級でしたが、普段の稽古でも自分の特徴と課題を把握して積極的な行動が日に日に増えていきました。
その頃になると、試合等のイベントにも全て挑戦するようになりました。

彼の様に、慎重なタイプの子供は年々増えているように感じます。
彼を見ていると真面目な性格が幸いしてか、本人が理解を示した事には向き合いやすい傾向にあることがわかりました。
「昨年の経験を活かした先読みの行動を取れるかどうか」それが今年の合宿における彼独自の課題でした。
成長の結果は、申し込みの時点で明白に。
もはや、挑戦に対して葛藤はありません。
そんな彼の成長の流れ、勢いをみて、私は更なる課題を彼に課すことにしたのです。
それが「ダジャレ大作戦!!!」
頭の働きをどれだけ早く判断に変えて、回答出来るかというもの。
合宿前の稽古でも試してみましたが、慣れてくると彼は次第に反応出来るようになりました。
合宿本番を迎えました。
そこには、今までにない「うるさい」彼の姿がありました。
今回の合宿には、白帯で参加してくれた生徒がいますが、実は彼とは旧知の仲だったのです。
普段は物静かな彼も、2度目の合宿の余裕に加えて気心の知れた友人の存在に浮かれている様子でした。
班長の言う事も聞けなくなっていて、私の部屋にも彼等の騒ぎ声は廊下を走りよく届いていました。
中級者としての自覚や態度、責任感を本来は見せるべきですが、そこはまだ小学4年生ですからね。
来年の課題が把握出来たこと、それは2度目の挑戦があったからに他ならない。
挑戦の継続で得た価値ある経験を積めたことが大事だと思います。
さて、合宿も2日目の稽古を終えて、待ちわびたバーベキューも終盤に差し掛かりました。
皆、笑顔は満開、腹は満腹です。
私は彼を呼びました。
お題を彼に投げましたが、黙ったままでした。
2問目、3問目と難易度を下げていきましたが、そわそわと動揺するばかりで、結局、彼の答えは聞くことが出来ませんでした。
いったん彼を席に戻すと、下を向き泣いていました。
バーベキュー後は、花火で盛り上がり部屋に戻ると、私はスナック菓子を配りに各部屋をまわりました。
彼の部屋にいくと、彼は隅の方で一人ポツンとノートをつけるふりをしていましたが、まだ泣いているのが確認出来ました。
30分が経過したころでしょうか。
廊下には、歯磨きやトイレに向かう就寝準備の音が響いています。
生徒達の足音はざわつきを増し、ヒソヒソ話も数が増えればそれなりの音量を奏でます。
そんな中、トーンの違うギャーギャー騒ぐ声が、忙しない足音とざわつくヒソヒソ話を遮りました。
あの2人でした。
きっと班長が上手くリードしたのでしょう。
元気な彼に戻っていました。
私は、先ほど渡せなかったスナック菓子を手に取り、形式的に騒ぎを叱りに行くと、菓子を取りに来た彼に泣いていた理由を聞きました。
「悔しかったです!」
即答でした。
彼の眼は、まだ悔しさが残っていましたが、どこか晴れやかで清々しくもあり力強さも感じました。
「ダジャレ大作戦!!!」
ふざけている様に聞こえるかも知れませんが、私は本気でした。
彼もまた、それに対して本気で挑んでくれたことが何よりもうれしくて思わず彼を抱きしめました。
私は、寝る前に何となく外の空気が吸いたくなり、閉まっていた玄関の鍵を開け夜空を眺めました。
30度を超えた日中も、夜まで暑さは籠りません。
時よりなびく優しい風は心地よく、合宿の疲れを達成感に変えてくれた気がします。
私は、綺麗な星を眺めながら一つの決断をしました。
最終日の朝を迎えました。
以前のレポートの通り、細かなストレスを感じる寝起きとなりましたが、希望に満ちた朝でした。
芝生の公園までの朝んぽ中に、私は彼に近寄り一つの課題を提案しました。
「ランニングでビリになるな」
昨年の2回、それと今年の初日、計3回のランニングで彼は毎回ビリだったのです。
「昨日の悔しさをバネに、決して諦めることなく何が何でもビリにならぬよう意地を張ってこい」
彼は「オス!」と小さく頷きました。
結果はご覧の通りです。最後ラストスパートをかけて勝負に勝ちました!

私の心に花火が打ち上りました。
数ある合宿の出来事で、これほど嬉しいことはありません。
合宿が明けて、道場では通常の稽古に戻り初日の稽古を迎えました。
私は、道場の外で生徒が来るのを待っていました。
すると、向こうの方から颯爽と歩く彼の姿がありました。
逞しくもあり、力強いさもある。
それに、優しさも兼ね備えている。
その姿はとてつもなく自然な表情で、自信に満ち溢れていました。
なによりも、今まで見たことのない明るさを放っています。
「オス!!」
今まで聞いたことのないくらいに力強くてクリアな声で道場に入るなり、テキパキと準備したかと思えば、既に先に来ていた生徒に躊躇なく「体操して!」と声を掛けたのです。
彼の普段からの高い意識と、合宿での挑戦と結果をみればある程度の成長は期待出来ました。
でも、これほどの変化が見られるとは。
一瞬の驚喜が駆け抜けたかと思うと、にじみでる歓喜が全身を包み込みました。
こんなに嬉しい事はありません。
さて、合宿から一月が経ちました。
道場では、来月に行われるTN型カップ(型の支部内戦)に向けて熱をおびています。
合宿に参加した生徒の積極的な姿勢が目立ちます。
黒帯や、今回紹介した2人のように成長を実感し自信を掴む為には、挑戦し続けること、挑戦をし続けられるような経験を積む事が大事です。
今出来る挑戦、得られる経験は今しか出来ません。
でも、それは今の成長や自信の為ではないのです。
だから、挑戦の有無を今の損得や好き嫌い、気分で判断するのは勿体ない気がします。
長い年月を掛けて年輪が重なり大樹となる様に経験を重ねた結果がやがて成長と自信を運んでくれる。
経験を重ねるのにも「流れ」があり、流れに身を任せたほうがスムーズに事は運びます。
時間は止まってくれません。
ではなくて、時間が我々をリードしてくれている。
ならば、こちらは挑戦を続けるまで。
走ればイイのです


失敗しようが、間違えようが、がむしゃらに走りまくった先に、きっと素敵な景色が見えてくる。
そんなもんだと思います。
すべてを掴んで欲しい。
未来に向けていってらっしゃい!








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